2021.07.30

チェーンストア経営のアップデートについて考える

 

今回のテーマは、チェーン店経営のアップデートがDXの方向性に繋がることについて考えてみます。
チェーンストア経営の根幹には、概ね「チェーンストア理論」が活用されています。その大きな特徴は以下3点になると思います。この3つの部分で、環境変化において対応しなければならない要素をデジタル化によって革新することがDXの方向性になると考えています。

 

チェーンストア理論の3つの特徴

①仕入れ価格の低減

チェーン店経営で重要なことは、1店舗毎の仕入れではなく、チェーン店全体で仕入れをまとめることで「仕入れ原価」を抑えられることです。よって、本部にはバイヤー部門ができ、一括して仕入れを担当します。それによって、大量仕入れを可能にし、購買価格を抑え、品質の良いものを安く消費者に提供することが可能になります。

 

②本部と店舗の分業化

1店舗毎に経営機能を有すると、意思決定機能がダブ付き、バラバラの意思決定がされたり、数字等の集約にコストがかかるなど、ムダが多くなります。経営部門を本部に集約し、店舗を販売に特化させることで、経営の効率化や標準化を図ることができます。本部が意思決定し、店舗が実行に特化することで全国一律のブランド価値を提供することが可能になります。(ブランド価値の画一化)

 

③店舗運営の標準化(チェーンストア3S)

チェーン展開を早期に可能にするには、あらゆる労働力(シニア、学生、主婦等)を吸収し、全国に店舗を作り、運営することが必要です。それを可能にしたのが「マニュアル」であり、業務を「単純化、標準化、専門化」する3Sという考え方があります。この3Sによる人材教育や活用によって、店舗のオペレーションを統一することができ、同じブランドの価値を提供することが可能になりました。(ブランド価値の画一化、人材の画一化)

 

チェーン店経営を成長させるには、上記の3つの利点を活用することが求められます。
一方、社会を取り巻く環境は大きく変化してきました。特にコロナをきっかけにして、多くの考え方も変化しました。特に、働き方に対する考え方、消費者のニーズ等は多様化・複雑化が進行しました。

 

①消費者ニーズの多様化、複雑化の視点

②働き方に対する考え方の視点

 

この2つの視点を使って、変化対応するべきポイントを記載します。

 

 

①消費者ニーズの多様化、複雑化の視点

ブランド価値の画一化は、大量の出店と全国統一したブランド価値を提供する上では、非常に合理的で、今後もチェーン店運営における基礎的な考え方になることは確実です。しかし、資本主義が成長段階(モノがなかった時代、大量生産・大量消費)から成熟段階(モノは溢れ、スマホ等の普及で個人毎のニーズに最適化された商品が推奨される時代)に差し掛かった日本では、全国画一的なニーズはおおよそ無くなり、地域毎、個々人毎に消費者の志向やニーズは細分化されてきています。よって、地域密着経営の企業や個人に向けて情報発信できる店舗づくりが求められてきます。
この変化は、本部の考えた「全国画一的な戦略」しか実行できない店舗は、競争力を失っていくことになります。消費者のニーズの違いを受け入れ、店舗従業員が自分のお店のお客様のニーズについて「考えること、実行すること」が店舗運営には必須になります。従業員ひとり一人が持っているアイデアや成功事例を店舗内に即時に共有できること、店舗を跨いで情報共有を即時横展開し、競合店よりも選ばれる店づくりが必要になります。特に、チェーン店経営での情報は本部から店舗への一方通行になり、意思決定が硬直化することが多くあります。また、店舗は待ちの姿勢になり、仕事が単なる作業となりがちです。戦略の画一化によって店舗運営が硬直化しないように「成功事例の共有スピードを向上する、顧客のニーズ等の情報を横展開する、個人の活躍に光を当てる」がキーワードになると思います。これをデジタルツールで加速することができれば、変化に適応することができると考えます。

 

②働き方に対する考え方の視点

この観点では人材の画一化について考える必要があります。特にコロナによってECと店舗を分け隔てなく活用する消費者が急増しました。その変化がもたらすものは、消費者はいつどこからでもスマホを使って、買い物ができ(小売)、遊ぶことができ(アミューズメント)、食べ物を注文することができる(飲食)環境になっていることです。よって、これからの店舗は、消費者が店舗を利用する「意味」を提供できることです。これまでは、出店すれば消費者が来店してくれた時代でした。しかし、これからは出店したら来店してくれるとは限りません。消費者に来店する目的を持たせることが必要になります。
例えば、ECで購入したもののピックアップやサイジング、ECで買ったものの返品を受け付ける拠点、接客に特化して専門的なアドバイスをする、コミュニティー作りとしての拠点、店舗全体を使ったブランド価値の可視化などが考えられます。このように、消費者を取り巻く環境がITの普及によって大きく変化し、リアル店舗を持つ意味も変化することになります。従業員は、店舗の持つ役割に応じて、現在の仕事を変える必要が出てきます。販売員からブランドアンバサダーに自己定義を変えたり、エンターテイメントを提供する意識を持つなど、「作業員からの脱却」は求められると思います。この意識チェンジや役割の迅速に可能にするためにデジタル化も考えられます。全国からスタッフを集めて教育をし直すのは莫大なコストがかかります。研修をデジタル化したり、ブランドや商品の知識をスタッフ一人ひとりに伝えることにデジタルツールは有効だと考えます。

 

全国一律のサービスを提供する価値(ブランド価値の画一化)や店舗オペレーションの画一化(人材の画一化)が強みになる場面もあれば、弱みに働く場面が出てきます。それを克服するには、人の持っているクリエイティブな要素であったり、情緒的な要素の発揮だと思います。店舗の意味が変われば、そこで働く従業員の役割も変わります。その変化に対応するスピードを上げることにDXが求められるのです。
経営者の役割は、従業員の働きがいを創り出し、中長期的に人材価値を高められることで、事業成長を持続させることです。これはどんな時代においても普遍的な考えであり、本質です。この「人の能力を増大すること」を軸にして、DXを行うことが重要だと思います。