2021.06.28

【vol.3 Re:Imagine】小売 第三世代の到来(後篇)

ゲスト:東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻(以下、MoT) 教授 青木 英彦さま

 

連載「Re:Imagine(リ・イマジン)」では、多様な業界の識者の方々との対談を通じて、前提条件が日々変わるアフター・コロナの世界をイマジン(想像)してまいります。

今回お迎えしたのは、MoTの青木教授です。前篇では、青木さんの現在の活動や小売業界への提言、コロナ禍の消費や企業経営の変化について説明いただきました。後篇は、青木さんが「小売 第三世代」と呼び注目している企業や今後の小売業界について議論を続けます。

 

[語り手] 青木 英彦、 栗岡 大介(以下、青木、栗岡)
[取材・構成・編集]栗岡
[写真] Eri Shimizu

 
 

「小売 第三世代」とは

栗岡:
青木さんは、流通チャネルの変化に着眼する中で「小売 第三世代」とよばれる企業群に注目されています。これまでの小売業の変遷も合わせて、ぜひご説明ください。

 


東京理科大学大学院 経営学研究科 技術経営専攻(以下、MoT) 教授 青木 英彦

野村総合研究所、ゴールドマン・サックス証券東京支店、メリルリンチ日本証券、野村證券でのべ31年に渡り小売業界担当の証券アナリスト業務に従事。1994年に米・DUKE大学MBA取得、2018年 神戸大学大学院経営学研究科 後期課程修了 博士(経営学)。2021年より現職。

 
 

青木:
はい。第一世代は、チェーンストア理論の流れを組んで購買、出店力を活かした業態の台頭です。スーパーやドラッグストア、ホームセンターはその代表例です。特徴としては、製造・配送・販売がそれぞれ独立分離している点です。第一世代の強みは品揃えと価格でしたが、インターネットの台頭もあり、その競争優位性が低下。その中で第二世代として台頭してきた業態は、ファースト・リテイリング、ニトリ、良品計画のように生産と販売が融合した製造小売です。第一と第二世代との違いは、前者が業態開発に注力する一方で後者は製品開発に注力し、品揃えから製品力に競争力の源泉をシフトさせた点です。ただ、両社のITシステムについては主にリアル店舗の運営に沿ったものとなっています。

 

出所:青木 英彦 作成

 
 

上記の図をご覧いただくと、私が注目している「小売 第三世代」は自社で製造またはデザインした商品やサービスを直接消費者へ販売するD2Cモデルとなっています。これは、第二世代の強みを踏襲しながら、よりインターネットとの親和性を意識したビジネスモデルとなっています。最近、デパートに行くとポップアップ・ストアと呼ばれる期間限定の店舗を目にする機会が増えました。その中にはD2C企業が多く、主戦場としているオンラインに加えてリアルでの販売やコミュティ形成を積極化させています。D2C企業の特徴は、製造と販売が融合していること、各種システムがオンライン販売に向けた仕様になっていること、製造コストの低下によりカスタマイズが可能になったことがあげられます。オーダースーツやシャツはその最たる例ですね。

 

栗岡:
なるほど、流通チャネルの変遷は、小売業界の歴史を端的に理解する為の優れたツールですね。今回お話を聞いて思ったのは、第一、二、三世代間に成長余地の差はありますが、どれかが消滅することはなく、世代間を超えたコラボレーションが起こっているように感じます。例えば、第三世代の関連企業にD2Cブランドを積極的に誘致する丸井グループが挙がっています。また、海外に目を移すと、アディダスがD2Cブランドのオールバーズ(Allbirds)とコラボレーション商品を発表するなど世代間での競争から共創を各社が積極的に取り入れています。

 

青木:
はい。第一・二世代は実店舗を有しているという特性を生かした立地創造をすればいいと考えています。具体的にはD2Cブランドや体験型のテナントを誘致し、立地と来店動機の紐付けを行うことが重要な戦略となるでしょう。

 

 
 

栗岡:
なるほど。今後は、キャッシュ・リッチな第一・二世代による第三世代(D2C企業)のM&Aや第二世代が積極的な投資を行うことによるD2C化も考えられますね。

 

青木:
はい、私もそう考えています。コロナは新しい潮流を作るというより既存の潮流を加速させるのではないか、と考えています。前篇ではコロナ禍の消費者のバリュー志向は強まっているというお話をしました。消費者がコスパを重視することで、結果的に製造・販売が一体となっている第二世代が強みを発揮しやすい状況が継続する可能性が高いと考えています。

 

 

出所:青木 英彦さん 作成

 
 

また、全体最適を前提とした戦略的IT投資を実行している第三世代(D2C企業)の成長にも期待しています。企業間でのアライアンス、M&Aなどアフター・コロナ社会の小売業界の変化から目を離せません。

 

栗岡:
まさに戦国時代ですね。地上を主戦場としてきた小売業界にIT、ECという空中戦が加わったことで、企業規模に拘らないクリエイティブな戦略が次々と生まれてくる。また、その戦略を支えるのは、「人」であるという青木さんの一貫した想いを強く感じました。やはり小売業は、消費者にとっても、企業経営者にとってもエキサイティングな業界ですね。これからが益々楽しみです。

 

最後に一言お願いします

 

青木:
ご存知の方も多いと思いますが、アマラの法則は、「技術革新が及ぼす社会への影響を私達は短期的に過大評価し、長期的に過小評価する」と述べています。コロナをキッカケに変化するスピードが加速し続ける世界に私達は短期的に一喜一憂しがちです。私自身、長期的な視点を持った経営戦略、業界への提言を心がけたいと思っています。

 

本日はどうもありがとうございました。

(後篇終わり)