2020.08.25

SWX総研 初代研究員就任にあたって

この度SWX総研の初代研究員に就任します、栗岡と申します。

  

SWXは、シフトワーカーエクスペリエンスを意味し、当総研では主に小売・飲食・サービス業のシフトワーカー(主にアルバイト、パート)の皆様の職場体験改善を目的に調査、(共同)研究に加えてイベント等を通じ、シフトワーカーの職場体験とは何か、どうあるべきかを考察します。

  

今回は、研究員の私が注目している企業、個人のライフスタイルの変化を紹介します。

  

  

コロナ・テックで見えてきたもの

  

SWX総研では、コロナをキッカケに需要が高まるモノを「コロナ・テック」と呼び調査を行っています(図表1参照)。

  

  

調査では、デジタルとアナログの繋ぎ目をビジネスチャンスと捉え活動を行う企業の成長があります。Uber Eatsは最たる例ですが、音楽・映像ストリーミングサービスも耳や目という人体の一部(アナログ)をデジタルデバイスに繋げています。飲食業界が窮地に追い込まれている最大の理由はメインコンテンツである「におい」「味」をデータ・ストリーミングサービスの様に届けることが困難なことであり、今後は固定費の大幅削減、従来のオペレーション、マーケティング機能の見直し、リアル・EC比率の調整の3点に於いて大幅な見直を行い、メインコンテンツの「届け方」を模索する必要があります。これは、飲食業に限らず小売や各種サービス業でも同様であり、SWX総研では未来の店舗の在り方や組織づくりについての提言も行います。

  

会社組織から、個人に目を移すとコロナをキッカケに、「ウェルビーイング(well-being)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。これは人間がより良く生きるためにどうするのか?幸福を哲学・科学する行為であり、2030年を最終年度とするSDGs(持続可能な開発目標)後の世界で一つの成長産業を形成すると注目しています。今後はフィジカルとメンタルの縦軸をテクノロジーによって繋げることを目指す「トランステック」企業の動向に注目しており(図表1 参照)、SWX総研では、シフトワーカーの「ウェルビーイング(well-being)」を調査・研究の重要対象とします。

  

  

百姓化する個人に企業はどう対応できるかが鍵に

  

作家のマーク・トウェインが「歴史は韻を踏む」という言葉を残した通り、現在の労働市場では中世~近世の百姓のような人々が増えていると仮説を立てています。従来のシフトワーカーは立地、給与、時間をもとに勤務先の選別を行ってきたものの、現在はスマートフォンおよび各種アプリの普及により自宅にいながら商品売買、デリバリーやクラウドソーシングを活用し隙間時間で所得を得る人が急増。コロナ禍でIT化が進む中でこの流れは継続し、個人が中世の百姓が林業・漁業・農業などに従事したように、ITの活用で多角化・多能工化することが予想されます。

  

「ランサーズ フリーランス実態調査(2019年度)」によると労働人口の17%がフリーランサーであり、江戸時代の農民(百姓)の人口が約85%(全人口に対し)であったことを考えると「個人の百姓化」は無理があると思われるかもしれません。しかし、小売・飲食業を中心としたサービス業では、店舗の90%程度がシフトワーカーであり、当時の百姓を考察することは様々な示唆をもたらすと考えています。

  

  

中世の紫草屋(図表2参照)は、農業はほとんど行わず貿易、廻船業で稼いだお金で貸金業を行うことで権力を築いた百姓です。また、当時の百姓は自分の町が気に入らないと一揆のみならず「欠落(かけおち)」と呼ばれる移住を繰り返しました。徳川家は「士農工商」制度を活用しガバナンスを行い、農民(百姓)に武士の次に高い身分を与えることで生き甲斐や働き甲斐の創出を図ったのではないかと私は考えます。

  

歴史はまた韻を踏み始めています。各企業がシフトワーカーに対する地位向上、職場環境を改善することは急務で、現状のままでは「欠落」(離職)が増加し人財の確保が一層厳しくなるのは明白です。

  

  

個人・企業の「よりよい生き方」に答えはない

  

個人・企業にとって「よりよい生き方」に一つの答えがあるならそれは宗教か一過性のものでしょう。だからこそ、私たちは常に変化を求められます。混沌を極める社会の中で希望があるとすれば、それはテクノロジーによって増幅する人間の拡張性・多様性です。これからの未来、ロボットやAIやバイオテックが日常に在る世界が到来します。しかし、人間以外のモノで効率化を図るだけなら企業間の差別化を生むことは時間とともに難しくなるでしょう。なぜなら、人間以外のモノは資本力によりその多くが複製可能だからです。DX化が声高に叫ばれる中、差別化し成長を続ける企業には卓越したテクノロジストに加えて、人間を深く理解する人財が必要です、言い換えると企業・組織、それを支える人間(従業員)への愛情ではないでしょうか。

  

コロナは「グローバル資本主義」という世界を開こうとする仕組みが、それを閉ざす機能も有していた、と私たちを絶望させました。同時に、リアルのみならずテクノロジーを介した人間同士のコミュニケーションにアイデアを創出する力(ちから)が潤沢にあり、それが多様なサービス、プロダクトを生むことを日々証明し続けています。これは、まさにダーウィンが解き明かした、自然の「多様性」が結果的に生む「進化」です。コロナという突然変異によって引き起こされる多様な発明や変化の連続が巡りにめぐって社会を豊かにする「進化」を育むとSWX総研は考えます。

  

  

SWX総研が各種活動を通じて本質的に目指すのは、サービス業界に於いて希望を創出することです。(図表3参照)その為には、混沌とする社会の中で多様な企業・組織・個人の「生き方」に焦点を当て、それぞれが育む「進化」を促進するパートナーになることです。

  

SWX総研をどうぞよろしくお願いします。

  

未来はここにある、ただ十分にいきわたってないだけだ。  
“The future is already here – it’s just not evenly distributed.”
                    William Gibson

                                  栗岡 大介